やすら樹 NO.77

医療と内観 ―第11回―

  DV(ドメスティック・バイオレンス)

 

 DVという言葉をご存じでしょうか。平成十三年の「日本新語・流行語大賞」は、小泉首相の所信表明演説で使われた「米百俵」やスローガンである「聖域なき改革」などにより総なめされたのですが、「狂牛病」「抵抗勢力」などに混じって選ばれたのが「DV」です。この年の四月に、いわゆるDV防止法(「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」)が成立し同年十月から施行され、国民の関心を生みやすい状況にあったからです。


  この法律により、主に夫による妻への暴力が夫婦げんかと扱われ勝ちであったのが、一気に犯罪となりました。実際に、平成十年に東京都が「女性に対する暴力」調査を行った結果は、身体的暴力を受けたことがあるは3人に1人、精神的暴力が2人に1人、性的暴力が5人に1人と多いものでした。私の住む富山県でも、今年の5月に一時保護されていた女性が夫の元に戻りDV被害で死亡する痛ましい事件が起きており、どこにでもDVが起きています。


 医療の現場にいますと、女性のアルコール依存症(以後ア症)の方によくDV被害者を認めます。暴力が長期間に渡り繰り返されると、女性に複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)を生み、一部の女性を飲酒に走らせるのかもしれません。アメリカの報告ではDV被害者はア症のハイリスク者であり、四十~六十%がア症に罹患していたとも言われています。
 一方、男性のア症者の中にDV加害者が存在します。しかし誤解していただきたくないのは、ア症者はすべてDV加害者者でないことです。私の経験でも明かで、飲酒して身体的、精神的、経済的暴力を妻に振るっていたア症者が、他の病気もあって飲むのをやめたにも係わらず、暴力がその後も続き、妻をDV支援を行っている民間グループ『女綱(なづな)』に紹介した事があります。


 DVを起こさせる原因について、ホルモンや脳の伝達物質の異常、バタラー(殴打者)の性格的問題、夫と妻の二者関係の問題、暴力が容認されるような社会的原因などの点から研究されていますが、原因が明らかにされていません。ただ、DV加害者は身体的、精神的、経済的力な優位性により各種の暴力によってもいとわずパートナーを支配し、パワーを現実化しようとするものであることに変わり有りません。


 身近にDVが発生した場合、私達はそれは犯罪行為という認識を持ち適切な対応をする必要があります。ア症を病気と考え、対処方法として治療を採ることにより、断酒する人が多くなった歴史が示すように。実際には、DV防止法に基づく配偶者暴力相談支援センターが各都道府県に設置(女性相談センタ-に置かれている)されており、警察も女性被害一一〇番(富山県)で相談に載ってくれます。その他に、富山県にはDV民間支援グループが存在しているように、地域によっては活発に活動をしています。我慢して、怪我や死にいたる前に、まずは相談して知識を得ること大切です。


 最後に、DV加害者を司法で罰するだけでは、別な女性が再び犠牲者となる可能があります。犯罪の視点だけでなく、行動嗜癖など別の観点で捉えての治療が必要です。しかし、欧米でもいろいろなプログラムが開発されていますが、再犯率が高いのが現状です。内観療法が、司法の場で多大な成果を上げたように、DV加害者の新しい治療に内観は大きな役割を持つのではと考えているこの頃です。

Copyright(C) 2019 Hiroaki Yoshimoto