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アルコール関連障害障害 ―第12回―

 依存症とシステム療法(その2)

 今回は、前回のシステムズ・アプローチという少し理論的な話しの続きです。具体的な例を示しますので、第11回にも目を通しながら読んでいただきますとみなさんのアレルギーが氷解?するかもしれません。

 (ケース1)Aさんは最近飲酒運転で自損事故を起こすことが多くなっていたが、いつももう二度としないと約束をしていた。今回、再び酒を飲んで交通事故を起こし、今度は相手側にケガを負わせたが軽症で入院まではいたらなかった。Aさんは酩酊状態である。

 こんな場合、Aさんの妻はどんな対応をしたら良いでしょうか。

(1).夫が酔っぱらっているので、妻がすぐに被害者のお宅にでかけて謝った。その為に、被害者側の飲酒運転に対する怒りが和らいだ。
(2).夫の酔いの醒めるのを待ち、状況を話した。しぶしぶながら夫が被害者宅に行き 謝った。しかし、時間がかなり経過していたために、被害者側の飲酒運転に対する怒りに火をそそぐ結果となった。

 みなさんならどうしますか。アルコール依存症の家族の方の対応は、普通は(1)です。被害者側の怒りが緩和されたのですから社会的には良いかもしれません。ですが、(1)のような状況になると、Aさんは嫌な相手側に頭を下げにいかないで保険屋まかせになったかもしれないし、被害者宅に出かけたとしても妻がすでに謝罪の気持ちを伝えているのでAさんへの相手側の攻撃性は和らいでおり、Aさんにとっては飲酒して人に怪我を負わせたという重大な問題に直面する機会になりにくいのです。家族システム的に考えると、(1)の対応は、妻の役割と言うよりむしろ母親としての役割をしていると見なされます。妻の役割に戻り(2)の対応をするのが正解と考えます。アルコール依存症の家族のそれぞれの役割を見ますと、ほとんどが役割の混乱を認めています。(1)のように妻が母親的役割をしながら、Aさんに夫としての役割を求めても難しいのです。妻は妻の役割をすることによって、Aさんは家庭の中で夫としての役割を目指す切っ掛けを提供することになるかもしれないのです。

 (ケース2)Bさんが酒を飲んで暴れて警察沙汰になった。翌日、妻が引き取ることで釈放された。

  こんな場合、Bさんの妻はどんな対応をしたら良いでしょうか。

(1).夫の恥であるが、両親や子供に事実を話した。
(2).夫の権威が損なわれるので、幸い、両親や子供がその事実を知らないので、話さず、夫に十分に反省してもらった。


 この場合、みなさんはどちらを選択されますか。アルコール依存症の家族は大抵、(2)を選択するのが多いのです。一見、Bさんの妻は夫のプライドを傷つけないように配慮しているのですが、家族という機能から考えてどうでしょうか。家族のメンバーに嫌なことであっても大事な情報は共有し、それを乗り越えて行くことによって家族の一体性が高まるのではないでしょうか。まさしく、(2)の対応は「臭いものには蓋をしろ」的感覚ですね。正解は(1)の対応です。システム論的には、システムはオープン・システムでなけらば、やがてそのシステムは滅びるという公式がありますが、まさに、Bさんの家族をシステムと考えた場合に、Bさんの妻の動機はどうであろうとも、家族間で情報操作が頻繁に行われる限り、クローズド・システムです。ですから、それらの対応、オープン・システムを目指して変えない限り、Bさんのアルコール依存症の治療もなかなかうまくいかない可能性があります。

 2つの事例を通して、システムズ・アプローチの香りをかいでいただけたでしょうか。このように、地道に時間をかけながら、より健康な家族構築を目指すことによりアルコール依存症者が治療に登場しなくても、治療がうまくいくこともあるのです。みなさんに、家族だけでも治療が成りたつという疑問が解けたでしょうか。紙面の都合上で、システム療法の説明は終え、次回はアルコール依存症者、当事者に対する治療を述べていきましょう。