やすら樹 NO.91

医療と内観 ―第25回―

   女優浅丘ルリ子と内観

 浅丘ルリ子・中国への旅「父の面影を追って」という番組欄が目に留まった。大連、瀋陽、長春を巡る旅で、私も昨年に大連、瀋陽を訪れたこともあり、なんとなくこのNHK・回想ドキュメント番組を見ることになった。


 番組は、旧満州国の官吏として赴任した父親浅井源次郎とその家族の足跡と、浅丘ルリ子(芸名)がデビュー以来、映画やTV、そして舞台で活躍してきた女優人生を語るという、二つのテーマが織りなっていた。


 番組は、大連、瀋陽と旅した後、浅丘さんの出生地である長春に降りたち、父の勤務した旧経済部の建物、そして日本人街を訪れている。次に、この番組のクライマックスとも言える、長春の水瓶であり保養地である浄月潭(じょうげつたん)の湖畔に彼女が佇んでいる。この地は、浅丘家(浅井家)の古いアルバムの中で、唯一地名が記されたもので、撮影された当時、彼女は誕生していなく、写真には両親と4歳上の姉が写されていた。その両親と姉に対して、写真を掲げて、ここに来たことを報告している最中に、ここまでは演技が入っていたのかもしれないが、突然慟哭し、その後に興味ある語りが入っていました。

今三人がいないと思って。
この人達にどのくらい、私が助けてもらっただろうし、迷惑をかけただろうと言っても。
なんにも言わないで、本当に、いろんな事を私らのためにやってくれたと思ったら。
でも、本当にいい人達だったんですよね。
本当に、私はどれだけ迷惑をかけたか、わからないけど。
私、何にもお返しをしていないんですよね。
だから、ほら、親孝行をしたくても親はなしと言うけど。
でも、まあね、ずっと私がやってこれた事が、親孝行だったかもしれないけど。
本当に私、ちゃんと両親や姉達にやさしく、ちゃんとお返しをしたかというと、あんまりお返しをしていないみたい。
やってくれたぶんが多いのに、私がお返しをしたぶんが少ないみたい。
でも許してくれると思います。
もう少し見守って下さい。

 彼女が語った言葉は、まさに内観3項目「お世話になったこと」「して返したこと」「迷惑をしたこと」、そのものです。彼女が内観を体験したという話しを聞いたことはないので、語った内容については、このように考えることができると思います。父の面影を追って大連、瀋陽、長春の各地の思いでの場所を尋ねる旅をするなかで、自分の生まれる前から、現在までの自分に対して、両親や姉を通して自分探しをしていたのではないかと。その結果、自然に3項目が出てきたのではないかと解釈したいのです。


 そう考えると、吉本伊信は、自分の体験や多くの身調べの方から、自己変容が起こる際に自然に3項目が語られることに気づいて、それならば逆に意図的に3項目が語られるようにするのにはどうしたらいいのかと試行錯誤を繰り返して、構造的な回想法を取り入れ、現在の内観原法に到達したのではないかと思うのです。

 

 この番組は、私達に浅丘ルリ子が経験した中国東北旅行という暇とお金をかけなくても、内観(療法)は簡単確実に、自分探しの旅を提供してくれると確信したのです。

Copyright(C) 2019 Hiroaki Yoshimoto