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アルコール関連障害障害 ―第9回―

 飲酒による社会的問題

 福岡市の職員が飲酒して追突・転落事故を起こし、幼児三人が犠牲になる痛ましい事件があったことは記憶に新しいことです。その後、全国で飲酒運転に対する一斉取り締まりが行われ、さらに新聞報道がされているに関わらず、「飲酒運転ゼロ」運動も十分な効果をあげているとは言えない状況です。

 実際に、各都道府県や市町村では飲酒運転をした職員に対して懲戒免職を含む厳罰化で望んでいるにも関わらず----。私の住む富山県でも、交通安全運動期間中に酒気帯び運転をして警察官が検挙され、その上に県警がそれを隠していたことがさらに話題を増すというおまけまでついた事件もありました。

 前回まで、飲酒による精神や身体に与える問題を中心に話してきましたが、アルコール関連問題はその他に事故、家族問題、職業問題(欠勤、職場の事故)、犯罪(他殺、強盗、暴行、暴力)などがあり、単なる病気だけでなく広範囲な社会的問題を起こすのが特徴です。

 例えば、家族問題を取り上げてみましょう。夫婦喧嘩、夫婦不和、家族メンバーに対する暴言・暴力、児童虐待、AC形成、配偶者虐待、家出、別居、離婚など列挙するだけでも大変です。深刻なのは、飲酒問題は夫婦間の問題だけには留まらず、次の世代の子どもに大きな影響を及ぼすことです。アルコール依存症の家庭に育った子どもさんは、アルコール依存症になりやすかったり、大人になった時に生きづらさを感じ対人関係の取りにくさを認めたりします。このことを、アダルト・チルドレンと言いますが、今回は詳しく述べず、別なところで触れたいと思います。

 さらに、アメリカでは、職場の問題点として昔から3Aが取り上げられてきました。事故頻発(accident)、(無断)欠勤(absenteeism)、アルコール依存症(alcohol dependence syndrome)の頭文字をとったものです。アルコール依存症の方は、一般に考えているのと異なり、職場内で10年、20年と人一倍に文句も言わずに真面目に働いてきた人に生じやすいのです。企業にとって有力な企業戦士であったからなお深刻な問題となります。飲酒問題が生じ始めると、職場内の隠れ飲みや二日酔いで仕事上のミスや事故が起こりやすくなるのは言うまでもありません。欠勤も土、日と飲み続け月曜日に出勤するつもであったものが飲酒が止まらなかったり二日酔いで無断欠勤したり、自分の叔父さんを3回も殺した強者もいます。つまり、欠勤の言い訳に「叔父さんの葬式で休ませて下さい」と理由にしたが、以前に同じ理由を忘れてしまって何回も殺してしまったことになり、笑えない事態ともなります。

 このように、飲酒した人だけでなく、夫婦に、家族に、職場に、地域社会に「アルコ-ルの害」という不幸の種を周囲にを撒き散らし、悲劇の幕開けとなってしまうことを十分に知っておくことが必要です。

 次回は、アルコール依存症に対する治療を取り上げたいと思います。

Copyright(C) 2019 Hiroaki Yoshimoto

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