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アルコール関連障害障害 ―第5回―

 飲酒問題とアルコール関連問題

 今日は精神科救急の当番日です。早速、精神科救急情報センター経由で救急車で酒の臭いがするAさん、髪を振り乱した奥さんが搬送されてきました。引き続いて硬い表情の親族4人が遅れて私の勤務する病院の救急センターに到着しました。

 奥さんや親族の話では、Aさんは、お酒で肝臓や膵臓を悪くして家の近くの総合病院内科に3年前より5、6回の入院をしています。退院後はしばらくは飲まないでいますが、飲み始めると止まらなくなり、遅刻、無断欠勤を繰り返し、真面目で人の嫌がることも嫌とも言わずに仕事をするなど熱心さより管理職の仕事をしていたが、最近の勤務態度より30年近く勤務した会社をついには辞めざるをえなくなりました。最近は、仕事もせずに家でぶらぶらし、飲むと昔のことや人の悪口を言うなどして家族に嫌がられ、機嫌が悪いと暴力を振るうなどするために、家の中は暗くなり、子供に不登校も認めるようになりました。

 このように、飲酒に関連した問題は単に本人の肝炎や肝硬変になって入退院を繰り返すというだけでありません。それは、Aさんのように家族に飲まないようにいくら説得されても「わかっちゃいるけどやめれない」というアルコ-ルに対する依存、お酒を急にやめると手が振るえるというAさんには、やがて幻視や記憶障害などがアルコ-ル精神病の出現が次第に目の前に迫りつつあり、身体的問題にとどまらず精神的問題も認めています。また、酔っぱらい運転や交通事故は認めていないものの家族への言葉の暴力や身体的な暴力の発生、それに関係して子供の不登校、アダルトチルドレンの問題、離婚の話しが親族で話されている状況です。このようにAさん一人を取り上げてみても、医学的な問題以外に心理的、社会的問題まで影響が及んでいます。

 1979年にWHOが上記のようなアルコールによる各種の問題をまとめて「アルコール関連問題」という概念を提唱し、アルコール依存症や有害使用、危険な使用などを取り上げたりしています。多面的な問題を秘めたアルコール関連問題に対して、我が国でもいろいろな対策がなされてきましたが、問題解決にはいたっていません。最近では「健康日本21」でもアルコールに関する項目が取り上げられ、アルコールに対する具体的な達成目標が掲げられています。このように、私たちは、アルコール関連問題という概念を頭に入れて、多方面から対応する必要があるのだという認識をする必要があるのです。

 次回は、アルコールによる身体問題を取り上げたいと思います。

Copyright(C) 2019 Hiroaki Yoshimoto

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